「Wisdom」 助川久美子/作曲
Anthony K./作詞
その花を 摘むなかれ
ただ 野に あるがまま
そが胸に 抱くもよし
地に落ちて 果てるまで
加えるべき ものはなし
ただ かけがえなきを知れ

その水を 汲むなかれ
ただ 川に あるがまま
渇きに 浸るもよし
疲れ果て 眠るまで
歩み止める ものはなし
ただ 心の声を聞け

その夢を 忌むなかれ
ただ 闇に あるがまま
恐れに もがくもよし
その時が 満ちるまで
光あてる 故はなし
ただ 道示す友と成せ

その影を 踏むなかれ
ただ 背に あるがまま
振り向きて 見るもよし
翼持ち 飛ぶまで
分け隔てる すべはなし
ただ かりそめの空蝉たれ

その花を 摘むなかれ
ただ 野に あるがまま



自主制作版
「calm awareness」から
助川久美子
vocal,woodbass,acoustic guitar




「助川久美子の代表作を一曲だけ挙げるとしたら」と質問されたら、私は「風の人」を選ぶかもしれない。「助川久美子の音楽世界をたった一曲で知りたい」という人には、「薔薇の刺青」を薦めるだろう。「風の人」が、孤独な魂の心象風景を、必要最低限の音楽的要素で情感豊かに歌い上げているのに対し、「薔薇の刺青」は、歌うというより「語り」に徹して、ドラマ性を極限まで追求している。いわばこの二つの作品は、地球の北極と南極の関係のようなものかもしれない。現に、彼女の熱狂的なファンは、概ね「風の人」派と「薔薇の刺青」派に分かれるようだ。

この「WISDOM」という作品は、「風の人」と「薔薇の刺青」のちょうど真ん中にある、いわば赤道のような位置づけができるかもしれない。

私にとって音楽とは、自己の哲学・思想を語るひとつの手段であるとも言える。その意味合いを最も前面に押し出したのが、この作品だ。だから、この曲を聴いて「理屈っぽい」とか「説教くさい」という感想が出たら、成功だと思っている。

この曲の歌唱指導をするとき、私は助川に「神が人間を叱りつけるように歌え」と言っている。それでも彼女の歌声は、大いなる母親が優しく子どもを諭すように響く。それでちょうどいいようだ。

「風の人」が父性的な表現で、「薔薇の刺青」が母性的な表現だとするなら、「WISDOM」は両者を統合した地点にある。父性的でもあり母性的でもある、いわば全人格的表現だろう。

この曲もメロディーがまず、あった。助川久美子の弾き語るスキャットを聴いている側から、いきなり私に言葉が訪れた。「その花を摘むなかれ・・・」私には確かにそう聞こえたのだ。その瞬間、自分の中から何が引き出されようとしているのか、私は即座に理解した。人類を至高の地点へと導く大いなる「智慧」・・・。

助川の作曲法が、半ばチャネリングのようにして「アカシック・レコード」から音をダウンロードしてくるのだとしたら、私の作詞法は、彼女の取り出した音を、なるべく正確に日本語の言葉に翻訳することかもしれない。いわば、音から言葉への自動翻訳装置に徹すること・・・。

最初のフレーズが言葉に置き換わった次の瞬間には、1番の歌詞が出来上がっていた。あとは無制限接続状態で、4番の歌詞まで引き出すのに2時間も要しなかった。



文/Anthony K.