「Mondoのテーマ」 助川久美子/作曲・作詞
おやすみ モンド
おやすみ
モンド
おまえを お月様が
暖かく 見守り
おまえを 風が
やさしく
強く なでる

おやすみ モンド
おやすみ
モンド
おまえは 星たちの
おしゃべりを
聞き
おまえに 海原が
物語を
そっと 語る

おやすみ モンド
おやすみ
モンド
おまえの 微笑みが
退屈な者たちに

光を 与え
石ころを 宝石に 変える

おやすみ モンド
おやすみ
モンド
おまえの 寝息が
大地に 吹きかかり
おまえの 魂が
一人 舟に乗り 消える

さよなら モンド
さよなら
モンド


一人多重録音
助川久美子 vocal,acoustic guitar


助川久美子と私との間には、しょっちゅうシンクロニシティが起きる。ある用事を思い出して、彼女に電話をかけようとしたとたん、向こうから電話がかかってくる。次に彼女に会ったら、こんな話をしようと思ったその内容が、その日の彼女の夢に現れる・・・。

この曲の成り立ちにも、ちょっとした奇遇があった。2003年の正月に、たまたまテレビの深夜映画で「MONDO」というフランス映画を観た。なかなか面白い映画で、彼女好みだろうと思ったので、よっぽど電話して知らせてやろうかと思ったが、映画はもう始まっていたし、夜も遅かったので、まあいいやと思って電話しなかった。ところが、翌日彼女から電話があって、たまたま同じ映画を観ていたという。やはり、すっかり気に入ったらしく、しかも、ただ気に入っただけでなく、テーマ曲ができたという。

その映画があの現代フランス文学を代表する作家ル・クレジオの原作だったとは、私も後から知ったことである。原作小説は、邦題「海を見たことがなかった少年〜モンドほか子供たちの物語〜」(集英社)。かなり前に私は小説を邦訳で読んでいたが、すぐには映画とつながらなかった。映画を監督したのは、ロマ系のトニー・ガトリフ監督。それ以前にも何度か映画化の話があったらしいが、クレジオはなかなかOKを出さなかったらしい。それを、ガトリフ監督なら、ということで実現したらしい。その逸話にたがわぬ見事な映画だった。その映像美、詩情、テーマ性、私もすっかり魅了された。

どこからともなく、フラッと町に流れ着いた、身内も家もないジプシーの少年「モンド」。彼は町を自分の家として、したたかに生きている。彼にとっては、海辺も墓地も畑も木の上も、すべてが寝床である。そんなホームレスの少年モンドは、実はとても純粋な魂の持ち主で、触れ合う街の人々の心に、一時暖かな灯火を投げかけていく。しかし、やがて養護施設の職員に、野良犬のように連れ去られていく。そのようにして、モンドは半永久的に人々の前から姿を消すが、モンドの面影は永遠に人々の心に残る・・・。

ちなみに、「モンド」という言葉には、フランス語で「世界」という意味の含みがある。まさにモンドは一個人であることをやめ、世界そのものと一体化したようにもとらえられる。

勝手気ままなところで気持ちよさそうに寝ているモンド少年の姿が印象に残った助川久美子は、彼への子守唄として曲を書き、詩をつけた。それは、いわば「世界」を安らかに寝かしつける子守唄かもしれない。

文/Anthony K.